人気ブログランキング | 話題のタグを見る

侵略・核戦争と環境問題 NO.7

侵略・核戦争と環境問題 NO.7
 深刻化する大気汚染(下)
  ~自動車文明の根底的問題性~
埴生孝史

 日帝・資本は自動車排ガス型大気汚染というあらたな公害をつくりだし、事実上のディーゼル車奨励制度によって、それを深刻化させているだけではありません。公害隠しに血道をあげ、公害問題と公害患者の社会的抹殺にやっきになっているのです。
侵略・核戦争と環境問題 NO.7_e0413639_02141159.png
●「基準」の大幅緩和で汚染を許容・促進

 日帝・環境庁は、1978年に、大気中の二酸化窒素(NO2)濃度の「環境基準」を、73年に決めた「0.02ppm以下」(1ppmは百万分の1)から、突如として、現行の「0.04ppmから0.06ppmの圏内またはそれ以下」と実際上3倍にもゆるめてしまいました。これは、73年第1次石油危機ー74年~75年世界同時恐慌をへて深刻な危機にあえいでいた自動車産業・道路建設(=土建)産業・鉄鋼産業・電力産業など基幹大資本の強い意向をくんでおこなわれたものでした。
 「環境基準」をいっきょに3倍もゆるめるという御都合主義的な数字操作の結果、「基準」を達成している地域は、それまでの全国9%から一夜にして93%になったのです。
 その一方で、1981年には、東京・大阪・横浜・川崎・横須賀を、総量規制地域(工場・事業所など固定発生源から排出される硫黄酸化物・窒素酸化物の排出総量を規制する地域)に指定しましたが、目下における最大の汚染源としての自動車(移動発生源)には、あえて手をつけませんでした。その結果、1979年をピークに漸減的傾向にあった大気中の二酸化窒素濃度は、1986年以来ふたたび上昇に転じ、緩和された「環境基準」さえ達成できないところがますます増えています。とりわけ大都市地域において事態は深刻で、東京・大阪・横浜の3地域をとってみると、「基準」を達成しているのは、91年度データで、感染道路沿いの自動車排ガス測定局(自排局)でわずか7%、住宅地の一般環境大気測定局(一般局)でも47%と半分にも届きません。
 そのため、政府は92年5月には窒素酸化物排出抑制法(いわゆる自動車NOx削減法)を成立させましたが、同法も、自動車業界の意向をそのままに、総量規制(規制地域の工場・事業所ごとに自動車排ガスの排出総量許容限度を設定)と乗り入れ規制(規制地域内には一定の排ガス基準以下の車しか乗り入れを認めない)を拒否し、ディーゼル車について新規制車への買い替えを「促進」する「車種規制」(罰則なし)などを内容とするもので、商業新聞においてさえ、「果たして、これでいつ環境基準が達成できるのか、はなはだ心もとない」(94年6月5日付朝日)と指摘されているようなしろものでしかありません。

●公害問題と公害患者の社会的抹殺を策す

 さて、78年に二酸化窒素の「環境基準」を大幅に緩和して排ガス汚染を許容し促進した日帝・政府は、87年には、「大気汚染公害は終わった」とばかりに、公害健康被害補償法(73年制定・74年施行)を改悪し、公害指定地域を解除し、公害患者の新たな認定はしないという許しがたい暴挙に出ました(88年施行)。この決定も、「大気汚染は大幅に改善されているのに、公害患者が増えるのはおかしい。地域指定を解除せよ」という資本の要求を代弁するものだったのです。
 指定地域というのは、事業活動などによって大気汚染が生じ、その影響によって、慢性気管支炎や気管支ぜん息などの指定疾病が多発している地域をさし、全国で41カ所指定されていました。指定地域が解除されたために、これまで指定地域だったところで指定疾病と同じ病気にかかっても、もはや公害患者と認定されなくなったわけです。
 しかし実際には、「大気汚染は大幅に改善されている」どころか、工業排煙型から自動車排ガス型へと汚染源・汚染物質の重点を移動させながら、いっそう深刻化し拡大しつつあるのはこれまで見たとおりです。事実、東京都、大阪府などの19の自治体は、公害患者の闘いに押されて、補償法の改悪を一定程度埋め合わすべく独自の「救済制度」を部分的に実施していますが、それにもとづく試算によっても、東京都の場合、83年5月から93年5月までの10年間に公害患者は6倍以上にもふえ、総計6万5千人以上にも達しているとみられます。
 なんの科学的根拠もなく、ただただ自動車産業などの資本の意向を代弁して「環境基準」を大幅に緩め、その「基準」すらますます達成できずに大気汚染を深刻化させている日帝・資本。そういう彼らの「公害は過去のもの」などという悪質な詭弁を、われわれは絶対に許してはなりません。また、このような日帝の公害隠しに肩入れし、口裏を合わせて、「過去の環境破壊のほうがよりあからさま」などと言うことは許されません。

●車社会=自動車文明の危険性、有害性

 言うまでもなく、自動車による公害は、排ガス大気汚染にとどまるものではありません。自動車は同時に、すさまじい騒音公害・振動公害をまきちらしています。また、ブレーキから発ガン性の強いアスベストをたえず飛散させています。そして、製造過程において年間30万トン以上の、廃棄段階において年間200万トンもの廃棄物を排出しています。さらに、自動車産業と死活的関連を有する石油産業も、その採掘・運搬・備蓄・精製の全行程において、深刻な大気汚染や水汚染をひきおこしています。なによりも、自動車は、年間1万5千人近くの事故死者と90万人にもおよぶ負傷者を生み出しています(93年)。
 およそ身近な商品のなかで、これほど危険きわまりなくこれほど有害な商品はまたとありません。自動車が、「社会的欠陥商品」とか「環境破壊体系そのもの」と言われるゆえんです。
 根本的問題はなにか。それは、現代帝国主義が、20年代のアメリカ以来、その延命の特殊な基軸として自動車産業を位置づけていることにあり、そうであるがゆえに、交通と物流の重点を自動車においているところにあります。
 このように大気汚染一つをとってみても、それは資本主義(帝国主義)とその特殊な延命形態に深く根ざした問題であることは明らかであり、その根本的打倒をとおしてしか真の解決は決してありえないのです。

 つづく 次回 : 多様化する水汚染(上) ~地下水のハイテク汚染~

                                                              

 『地球が燃えている』ナオミ・クライン 大月書店 2020年11月刊

7章 ラディカルな教皇庁?
 2015年7月、ローマ教皇・フランシスコはクラインに気候変動についての発言を依頼しました。クラインは出席しようかどうかと考えましたが、受け入れます。
 クラインは、教皇・教会はいまの「気候変動」を無視できなくなって、教皇-ローマ・カトリックは「気候変動」への姿勢を示そうとした、と考えています。
【13c教会は、市民層(職人、商人、製造業者ら)の台頭で動揺に陥ります。アリストテレス哲学も普及して、教会は自然学を無視できなくなります。トーマス・アクィナスは、神学に自然学を取り入れます。
 また、ガリレイ(1564~1642)は地動説の立場を主張したため、教会から弾圧されます。ローマ教会はつい最近、地動説を認めたのです。ダーウィンの進化論は認めていません】
 クラインは「ユダヤ=キリスト教に残る解釈ほど人間中心的なものはない」と言います。キリスト教は、「神」が自然―人間をつくったことから、クラインは教会の「人間は動物ではない」を引用しています。
 市民、労働者の科学が発展してきて、自然界の認識が深まり、広くなりますと、教会はその科学ー自然界を取り入れて、教会の権威を保ってきた、と言えます。
【科学は「中立」であると言えません。階級的立場に規定されています。今日の「科学」は、一言でブルジョアジーの「科学」です。労働者は生産手段を操作して、生産物を作っています。本来、生産物は労働者自らのものです。しかし、工場・生産手段は資本家のものであることから、生産物・商品は資本家のものになっています。労働者は労働組合をとおして、科学・生産手段を奪還していきます。科学・技術者は労働者と連帯し、労働者階級に移行し、労働者とともに科学・技術を自らの手に奪還します】
 クラインは言います。"キリスト教がエコロジーを取り入れてゆく"。
 追記で、クラインは教会を弾劾します。教会が気候変動について考えることは大切だが、教会の指導層が子供、修道女を虐待していることに目をむけるべきと。

8章 奴らは溺れさせておけー温暖化する世界における他者化の暴力
 パレスチナは大気汚染、水汚染そして「人間が耐えられないような気温レベル」です。現実は、イスラエルの軍事占領、空襲そして差別です。
 他者化の暴力はアメリカの、先住民の美しい原野が自然環境保護公園にされてしまうのです。自然保護団体の手で「もっとも侵略的な土地の奪取」が行われています。また、海面上昇にみまわれる国もあります。
 アフリカ・サハラ砂漠にあるニジェールでは、鉱山の採掘、新たなパイプライン、輸出ターミナルの開発が行われます。
シリアの干ばつ、アフガニスタン、パキスタン、イエメン等では水不足、気温上昇、戦争で、難民はヨーロッパへ。難民は途中で亡くなります。

 なお、クラインは※で、ロンドン大学ユニバーシティ―カレッジの科学者チームの論文(2015年はじめ)を引用します。
1500年~1600年の小氷期は、ヨーロッパ人・コロンブスらがアメリカ大陸にわたり、インディアンを虐殺、追放して土地を奪ったことにある、と言うのです。即ち、インディアンの土地が原野となり、森林・原野がCO2を吸収したためであると。

 学習会
 5月14日付けの『原発とめよう群馬 原発事故・現状だより』第565号
見出し : イスラエルのガザ空爆を、防衛省副大臣が賞賛の暴挙
裏面  : 映画『太陽を盗んだ男』 若き沢田研二の主演 中学校教師城戸誠(沢田研二)がプルトニウム原爆をつくります。
     学習会の講師は、"あなたのキッチンでできる原爆の作り方"として、写真を提示し、わかりやすく説明しました。

 本学習会では、"汚染水海洋放出問題を考える"(4月9日)、原発が引き起こす人体、生物への影響、地球の温暖化また"オリンピックは中止"等が取り上げられ、レポートされます。
 クラインの※のレポートで、大航海時代のヨーロッパ人がアメリカ大陸のインディアンを虐殺・弾圧したために、インディアンの土地が原野化して、森林・原野でCO2が吸収され、中世の「小氷期」になった。この説には無理がある、との議論がありました。他方に、「小氷期」は、太陽黒点の減少の説あります。しかし、黒点の発生による日射量の増えは、0.1%程度と言います。
侵略・核戦争と環境問題 NO.7_e0413639_05532887.png

 


by fkus755m | 2021-05-22 11:52 | Trackback | Comments(0)

考えを共有するため


by fkus755m